著者:澤村亮(リハビリコンサルタント・理学療法士/Link Reha代表)
はじめに
クリニック経営では、院長が良い方針を持っていても、それが現場に十分伝わらないことで、少しずつ組織が不安定になることがあります。
特に整形外科では、リハビリ部門が患者さんと長く関わり、日々の判断が運営に直結しやすいため、院長と現場のズレが表れやすい傾向があります。
最近の若い子は何を考えているか分からない。目標を伝えても動かない。部署を任せたいのに育たない。そのような悩みを感じている院長先生も多いのではないでしょうか。
この記事では、クリニック経営で院長と現場がズレると何が起きるのかを整理しながら、特に整形外科リハビリで起こりやすい課題と、安定運営につなげる考え方を実務視点で分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 経営と現場がズレたときに起こりやすい問題
- 整形外科のリハビリ部門でズレが起こりやすい理由
- 売上目標や方針が現場で機能しない背景
- コミュニケーション不足が離職や成長停滞につながる理由
- 現場が自走しやすくなる組織づくりの土台
結論
経営と現場のズレは、単なる伝達不足ではありません。
院長の考え、現場が大切にしていること、部署長の役割、数値目標の意味、評価の基準がつながっていないと、スタッフは「何を大切にして働けばよいか」が分からなくなります。すると、一人ひとりは真面目に働いていても、組織としては安定しにくくなります。
逆に言えば、目標、数値、行動、評価が現場に分かる形で共有されると、リハビリ部門は驚くほど変わることがあります。私は、このズレを小さくすることが、整形外科経営の大きな分岐点になると感じています。

なぜ今、経営と現場のズレが問題になりやすいのか
今のクリニック運営は、以前よりも「院長が良い考えを持っているだけ」では回りにくくなっています。
人材確保が難しく、若い世代の価値観も変化し、患者さん側も情報を比較して医療機関を選ぶ時代になっています。さらに、リハビリ部門では、担当者ごとの対応が患者満足や継続率に影響しやすいため、現場の質がそのまま経営に関わります。
私が現場で感じるのは、うまくいかない組織ほど「考えがない」のではなく、「考えが伝わっていない」ことが多いように感じます。
院長は院長なりに思いを持っています。部署長も責任感があります。スタッフも患者さんを大切にしたい気持ちがあります。
それでもズレが生じるのは、それぞれが見ている景色が違うからです。
院長は経営全体を見ています。
部署長は現場を回しながら上の意向も受けています。
スタッフは目の前の患者さんを見ています。
この視点の違いを埋める会話や仕組みが不足すると、少しずつ組織にズレが生まれます。
たとえば、院長は「もっと予約を増やしたい」と考えていても、現場は「患者さんを丁寧にゆっくりと見たい」と感じていることがあります。
院長は「数値管理をしたい」と思っていても、現場は「急に忙しくなった」と受け取ることがあります。
ここで必要なのは、どちらかが間違っていると決めることではなく、考え方をつなぐことです。
最初に起こりやすいのは、現場の判断が鈍くなることです
経営と現場がズレた組織で、最初から大きなトラブルが起こるとは限りません。
実際には、もっと静かに問題が進んでいくことが多いです。最初に起こりやすいのは、現場の判断が鈍くなることです。
たとえば、次のようなことが起こります。
- 予約枠の取り方、埋まり方にスタッフごとに差が生じる
- キャンセルが多いときに、誰が何を見直すべきか分からない
- 治療時間の延長が良いことなのか、運営を乱すことなのか判断しにくい
- 新人を育てたいが、稼働を落とさずにどう両立するのか分からない
- 数字の話が出ても、自分の行動とどうつながるのか見えにくい
このように判断基準が曖昧になると、スタッフは「やる気がない」のではなく、「間違えたくないから動きにくい」状態になりやすくなります。
特に真面目なスタッフほど、勝手に判断して問題になることを避けようとするため、受け身になりやすい傾向があります。
私は部署長の方から、「院の方向性が見えないので、その場しのぎの対応になりやすい」「改善したい気持ちはあるが、どこまで踏み込んでよいか分からない」という声を聞くことがあります。
これは能力の問題ではなく、組織として判断の土台が共有されていないことが原因である場合が多いです。

よくある課題1 目標を伝えても、スタッフが動かない
院長からすると、「目標を作って伝えているのに、現場が思うように動かない」と感じることがあると思います。
現場では、「なぜその数字が必要なのかが分からない」「数字だけ言われても何を変えればよいのか見えない」と受け止めていることがあります。
ここに大きなズレがあります。
特に今の若い世代は、やる気がないというより、納得しないと動きにくい傾向があると私は感じています。
もちろん個人差はありますが、以前のように「上から言われたからやる」という形だけでは力が出にくい人が増えているように感じます。
ただし、意味が腹落ちしたときには、とても真面目に動く人も多いです。
たとえば、
「1日の単位数を上げてほしい」
とだけ言われても、現場は動きにくいです。
しかし、
「より多くの困っている方にリハビリを届け回復をサポートしたい」
「部門の収益が安定させ、給与アップや職場環境改善など、働く方の幸せを形にしたい」
「患者さんの貢献と、スタッフの幸せを両立する資料として、1日○単位を目指してほしい」
このように整理して伝えると、数字の目標(単位数)が「単なるノルマ」ではなく、「自分たちの幸せと患者さんの笑顔につながる指標」として受け止めてもらいやすくなります。
ここは、船をこぐ例えに近いかもしれません。
一人ひとりが一生懸命にオールをこいでいても、どこに向かうかが共有されていなければ、疲れるばかりで目的地にたどり着かなくなります。
現場が悪いのではなく、方向がそろっていないのが問題です。
よくある課題2 患者さんを大切にする気持ちが、組織の不安定さにつながることがある
整形外科のリハビリ部門では、患者さんを大切にする気持ちが強いスタッフほど、個人判断で時間を延長したり、予約枠を埋めすぎないようにしたりすることがあります。
本人としては、患者さんに丁寧に対応したいという善意で動いていますし、その気持ちはとても大切です。
ただし、クリニック全体の考え方や共通ルールが共有されていないと、その善意が結果として組織を不安定にすることがあります。
たとえば、
- 一人だけ治療時間が長くなり、次の流れが乱れる
- 担当者ごとに予約の埋め方が違い、全体の稼働が読みにくくなる
- 他のスタッフが合わせにくくなり、不公平感が出る
- 部署長が全体調整をしづらくなる
- 結果として、患者さんへの対応の質にもばらつきが出る
ここで大切なのは、「患者第一」と「経営視点」を対立させないことです。
本来、収益が安定することは、あとで人材育成、配置、設備、働きやすさにつながります。
つまり、経営を考えることは患者さんを軽視することではなく、患者さんを大切にし続けるために必要な土台です。
現場では、学校教育や新人教育の中で、患者さんへの接し方や治療技術は学んでも、マネジメントや収益構造を体系的に学ぶ機会はほとんどありません。
そのため、プレイヤーとして優秀でも、組織全体を見て判断する視点が育ちにくいことがあります。
私はこのギャップを埋めることが、リハビリ部門の安定運営において非常に重要だと感じています。
よくある課題3 コミュニケーション不足が、離職と成長の停滞を招く
院長とスタッフの会話が少ない。
部署長と一般スタッフの間で、定期的に考えを確認する場が少ない。
努力しても見てもらえている感じがしない。
このような状態が続くと、現場は少しずつ「どうせ言っても変わらない」と感じやすくなります。
この空気は危険です。
上司が意見を言うと否定されたように感じる。
現場が意見を言うと面倒だと思われそうで言えない。
こうした状態になると、組織全体の成長が遅くなります。
変化の早い時代に、この停滞は静かですが大きな問題です。
一方で、コミュニケーションが増え、お互いを大切に思う感覚が出てくると、個々のストレスは予想以上に軽減することがあります。
私は現場で、努力を見てもらえる環境があるだけで、人の表情や行動が変わる場面を何度も見てきました。面談を通して離職を防げたことも多く経験しました。
そのため、気合いや精神論だけではなく、
- 面談の実施
- 目標のすり合わせ(会議、セミナー、コミュニケーション等)
- 努力が伝わる言葉がけ
- 役割の見える化
- 数値目標と行動目標の共有
こうした仕組みを整えることが重要です。
人は完璧だから頑張れるのではなく、自分の努力が意味あるものとして受け止められていると感じたときに頑張りやすくなります。
厚生労働省は、チーム医療を、多様な医療スタッフが目的と情報を共有し、業務を分担しつつ連携・補完して患者に的確に対応する医療と整理しています。整形外科クリニックのリハビリ部門でも、この情報共有の考え方はそのまま重要です。
《出典》チーム医療の推進について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf

経営と現場のズレは、目に見えにくいからこそ早めに気づくことが大切です
経営と現場のズレは、いきなり大問題として表に出ることばかりではありません。
多くの場合は、少しずつ進みます。
- 会話が減る
- 判断が遅くなる
- 提案が出なくなる
- 数字が安定しない
- 部署長が疲れてくる
- スタッフの愛着が薄くなる
このような変化は、一つひとつは小さく見えるかもしれません。
しかし、その背景で経営と現場の目的が離れていれば、組織の土台は少しずつ弱くなっていきます。
リハビリ部門を安定して運営するにあたり、単に人を増やす、売上を追う、厳しく管理するだけでは足りません。
何を目指すのか、なぜその数字が必要なのか、現場にどのような行動を期待しているのかを共有することが重要です。
院長の方針が現場に伝わらないと、最も苦しくなるのは部署長です
整形外科クリニックで経営と現場のズレが起きたとき、真ん中で最も苦しくなりやすいのは部署長です。
院長は経営全体を見ています。
一般スタッフは日々の患者対応を見ています。
部署長は、その間で「院長の考えを理解しながら、現場にも分かる形で伝え、実際に回る状態へ整える」役割を担います。
ところが、院長の考えが十分に共有されていなかったり、目標の意味が現場向けに翻訳されていなかったりすると、部署長はただ言われたことを下に流すだけの立場になりやすくなります。
この状態が続くと、部署長自身が考えて改善する力を出しにくくなります。
私はこの状況を、地図を持たずに先頭を歩かされている状態に近いと感じています。
上からは「もっと良くしてほしい」と言われる。
下からは「どこへ向かうのですか」と聞かれる。
しかし、自分自身も目的地を十分に共有されていない。
これでは、良いリーダーシップを発揮しろと言われても難しいのが自然です。
実際の現場でも、院の方向性が見えない部署長は、改善提案を考えるより、日々のトラブル処理に追われやすくなります。
その結果、その下のスタッフも「ここでは自分で考えてもあまり変わらない」と感じやすくなり、言われたことだけをこなす成長のない組織になりやすくなります。

成長しない組織に共通するのは「何を目指すか」が見えないことです
成長しにくい組織では、忙しさそのものよりも、「何のために頑張るのか」が見えにくいことが問題になっているケースが多くあります。
たとえば、次のような状態です。
- 数字の話は出るが、意味が共有されていない
- 注意や指摘はあるが、成長の方向性が示されない
- 頑張っても評価基準が分からない
- 面談や目標の共有する場面が少なく、努力が見えにくい
- 役職があっても、期待される役割が曖昧
- 問題が起きても、学びに変える場がない
このような状態では、優秀な人ほど疲れやすくなります。
なぜなら、真面目な人ほど「もっと良くしたい」と考えるからです。ところが、何を頑張ればよいのかが見えないと、努力が空回りしやすくなります。
特に今の若い世代は、「言われたからやる」より、「意味が分かるからやる」という傾向が以前より強いと、私は現場で感じています。
これは決して悪いことではありません。むしろ、目的が腹落ちしたときには、非常に主体的に動いてくれる人も多いです。
ただ、そのためにはコミュニケーションが必要です。
「最近の若い人は何を考えているか分からない」と言われることがありますが、実際には、考えていないのではなく、考えを出してよい空気や、考えを出したときに受け止めてもらえる仕組みがないことも少なくありません。
厚生労働省は、チーム医療を、多様な医療スタッフが目的と情報を共有し、業務を分担しつつ連携・補完して患者に的確に対応する医療と整理しています。つまり、質の高い医療の前提として、情報共有と役割分担が置かれています。整形外科クリニックのリハビリ部門でも、この視点は非常に重要です。
「どうせ給与は上がらない」という空気が、改善を止めてしまう
現場改善が進まない理由として、見落とされやすいのが、「頑張っても変わらない」という空気です。
院長側は「患者さんのためにもっと良い運営にしたい」と考えていても、現場側は「どうせ給与は上がらない」「役割が増えるだけ」「頑張っても評価されない」と感じていることがあります。
この認識の差が大きいと、どれだけ正しい改善策を出しても進みにくくなります。
私はこの問題を、気持ちの問題だけで片づけないほうがよいと思っています。
なぜなら、これは感情というより、仕組みの問題であることが多いからです。
- 努力が見える形で共有されていない
- 面談の実施がなく、評価の理由が伝わらない
- 役割が広がっても、期待や還元が見えにくい
- 管理職候補や役割を育てる設計がない
- 数値目標だけが降りてきて、意味づけがない
このような状態では、現場は守りに入りやすくなります。
すると改善提案は減り、新しい挑戦も起こりにくくなります。表面上は大きな問題がなく見えても、組織としては少しずつ弱くなっていきます。
AHRQは、医療者間のコミュニケーション不全が医療の質や安全に大きく影響しうること、そしてハドルのような短い情報共有の仕組みが、問題の早期発見や参加意識の向上に役立つと示しています。整形外科の外来やリハビリ部門でも、長い会議より、短くても定期的に方向を合わせる仕組みが有効なことは多いです。
《出典》Improving Patient Safety and Team Communication through Daily Huddles(AHRQ PSNet)
https://psnet.ahrq.gov/primer/improving-patient-safety-and-team-communication-through-daily-huddles
整形外科のリハビリ部門で、経営と現場のズレが起こりやすい理由
整形外科のリハビリ部門では、経営と現場のズレが特に起こりやすいと私は感じています。
理由は大きく3つあります。
1.患者さんと接する時間が長く、個人判断が入りやすい
リハビリでは、理学療法士や作業療法士が患者さんと比較的長く関わります。
そのため、担当者ごとの価値観や判断が、予約運用、説明の質、時間配分、継続率に反映されやすくなります。
これは強みでもありますが、共通ルールや共通目標が弱いと、組織としての一貫性が崩れやすくなります。
2.学校教育で経営やマネジメントを学ぶ機会が少ない
多くの療法士は、患者さんを大切にすること、評価すること、治療することは学んできています。
一方で、予約設計、稼働率、キャンセル率、人材育成、利益構造、組織マネジメントを体系的に学ぶ機会は多くありません。
そのため、現場で頑張っているのに、組織としてどう動くと良いのかが分かりにくいままになりやすいのです。
3.患者第一の思いが強く、組織視点が後回しになりやすい
患者さんを大切にすることは、医療者として非常に重要です。
ただ、患者さんを大切にし続けるためには、組織が安定していなければなりません。
収益が安定しなければ、人材育成の時間も確保しにくいです。採用や教育が不安定なら、提供できる医療の質も安定しません。
つまり、経営を考えることは患者さんを軽く見ることではなく、患者さんを大切にし続けるための条件です。
この点が現場に十分伝わっていないと、「患者さんのためにやっていること」と「クリニック全体に必要なこと」が別々に見えてしまいます。そこにズレが生まれます。

改善の第一歩は、意義目標・数値目標・行動目標を共有することです
組織改善というと、仕組みを増やすことや資料を整えることを先に考えがちです。
もちろんそれも大切ですが、私の経験上、最初に必要なのは、目標を共有することです。
ここでいう目標は、単なる売上目標だけではありません。
少なくとも、次の3つを分けて共有したほうが、現場は動きやすくなります。
意義目標
なぜこの仕事をするのか、どんなクリニックを目指すのかというモチベーションがあがる目標です。
たとえば、
「自分自身や家族を紹介したいと思えるクリニックにする」
「患者さんが安心して継続通院できる外来体制をつくる」
「地域の方が困ったときに、最初に相談したいと思える整形外科になる」
「最新の知見を学び、より良い医療を提供する」
といったものです。
数値目標
現場を安定運営するために必要な数字です。
たとえば、
「理学療法士1人あたりの1日の単位数」
「キャンセル率」
「稼働率」
「離脱数と理由」
「売上」
などです。
行動目標
その数字や目的に近づくために、何を、いつ、どのようにやるかです。
たとえば、
「予約枠は朝の始まる前には、決められた数を埋めるよう予約を取る」
「単位数を意識してスタッフが協力して情報共有し対応する」
「キャンセル理由を把握し対策を考える」
「定期的に面談を行い、個々の役割や成長を促す」
「患者さんへの説明を丁寧にする。明るい雰囲気を作る」
などです。
この3つがそろうと、現場はかなり動きやすくなります。
逆に、数値目標だけを伝えても、「何のために」「どうやって」が抜けると続きません。
私は現場で、意義目標が共有されるだけで、スタッフの受け止め方が変わる場面を見てきました。
人は数字のためだけには動きにくいですが、意味が見えたときには動きやすくなります。

面談の実施と短い共有の場が、現場を変えるきっかけになります
現場を安定させたいとき、私は大きな制度変更よりも先に、面談の実施と短い共有の場を整えることを勧めることがあります。
理由は単純で、人は「理解された」と感じると動きやすくなるからです。
面談で確認したいのは、難しいことではありません。
- 今、困っていることは何か
- どこにやりづらさを感じているか
- 何を頑張っているか
- 今後どんな成長をどの時期までにしていきたいか
- そのために今何をするべきか
- 役割や目標は理解できているか
こうした確認を定期的に行うだけでも、現場の空気は変わります。
また、朝礼や短いミーティングで、目的、注意点、共有事項を簡潔に確認するだけでも、判断のズレは減りやすくなります。
ここで大切なのは、面談の実施を「評価のための場」だけにしないことです。
詰めるための面談になると、現場は本音を言わなくなります。
そうではなく、困りごとや成長の方向を一緒に整理し、一人一人に向き合うことで、現場は安心して考えを出しやすくなります。
私は、組織が安定している院ほど、長時間の会議をしているわけではなく、短くても必要な共有ができていると感じます。
週に1回、5分だけ方向を合わせる。
半年に1回でも面談の実施をする。
目標を共有するセミナーを実施する。
部署長がスタッフの努力を言葉にする。
その積み重ねが、現場の納得感をつくります。
地域に選ばれるクリニックは、経営と現場の距離が近いと感じます
私は、地域で選ばれる整形外科クリニックには共通点があると感じています。
それは、院長の考えが現場に届いており、現場の意見が経営に上がっていくことです。
これは、ただ仲が良いという意味ではありません。
目標、数字、役割、改善点が、なるべく同じ言葉で共有されているということです。
この状態になると、
- スタッフが自院に愛着を持ちやすい
- 改善提案が出やすい
- 患者さんへの説明の質がそろいやすい
- 予約や運営が安定しやすい
- 離職が減りやすい
- 地域からの信頼が積み上がりやすい
という流れが生まれます。
逆に、経営と現場の距離が遠いままだと、良い条件の職場があればすぐに移る、改善提案が出ない、部署長が疲弊する、といった形で組織の土台が弱くなりやすくなります。
クリニック経営の失敗は、極端な赤字や閉院だけを指すのではないと思います。
現場が育たず、任せられる人が増えず、いつまでも院長がすべてを抱え続けることも、長い目で見れば大きな経営課題です。

teamwork photo.
まとめ
経営と現場のズレは、ある日突然大きな問題として表れるわけではありません。
多くは、方向性が伝わらない、数字の意味が共有されない、努力が見えない、面談の実施がない、といった小さなズレの積み重ねから始まります。
整形外科のリハビリ部門は、患者さんへの思いが強く、個人の裁量も大きいからこそ、このズレが運営に影響しやすい部署です。
だからこそ、院長と現場の間にある言葉の差、目的の差、数字の理解の差を、丁寧に埋めていくことがとても大切です。
私の経験上、現場が変わり始めるきっかけは、特別な制度よりも、
「何を目指すのか」
「なぜその数字が必要なのか」
「そのために何を行動すればよいのか」
が共有されたときに生まれやすいです。
もし今、
最近の若い子は何を考えているか分からない、
目標を伝えても動かない、
部署を任せたいのに育たない、
と感じているなら、まずは現場の努力不足を疑う前に、目標共有と対話の仕組みを見直してみてください。
経営と現場のズレが小さくなるほど、現場の意見は活き、患者さんへの満足にもつながり、地域に選ばれるクリニックに近づいていきます。
リハビリテーション部が安定して自走できる組織づくりは、決して遠い話ではありません。大切なのは、少しずつでも正しい方向で整えていくことです。
この記事が、その第一歩のきっかけになれば幸いです。皆さまのクリニック運営がより良い方向へ進み、スタッフにも患者さんにも信頼される組織になることを心から願っています。
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